西沢はちょっと遅かった (山川 徳明 )


爺ケ岳の北面、西沢に久保田さんといってきました。昨年は真っ白な

大斜面だったのですが今年は細々とした雪渓が続いているのみで、期

待はずれでした。が、せっかく登ったので冷尾根の稜線から北面フラ

ンケを滑ってきました。冷尾根上からの滑降は記録を見たことはない

のですが、おいしそうな斜面なので、当然滑られていると思います。

以下レポートです。

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爺ケ岳北面 大冷沢西沢スキー滑降

                          山川 徳明

【1997年5月18日(日)】

【天気  】 晴れ時々曇り

【メンバー】 久保田 山川

 昨年滑った西沢が好印象だったので、久保田さんを誘って今年もやっ

てきた。重いスキーを担いで林道を延々1時間、西俣出合について見る

とどうだろう。昨年は一面残雪の斜面であったのに西沢から細々とした

雪渓が押し出してきているだけではないですか。

 沢を渡ろうとするがスノーブリッジがかなり薄くなっており、いやー

な感じである。私は、川に落ちそうなところは怖くてしかたがない。わ

たれる場所をさがすが、うまい場所がないのでしかたなく薄くなった雪

渓の上を一人ずつそうっと渡る。西沢の雪渓にはい上がったときはほっ

とした。その上も幅10mくらいの雪渓がつながっているのみで、昨年

見た広大な大斜面の影はかけらもない。ちょっと失望したが、せっかく

きたのだから登ってみる。途中小滝が露出し、雪が切れかかっていたが

スキーをぬいで登る。40分ほど登るとようやく広い雪渓になるが落石

のあとも多く、雪面は汚れている。

 上から3人のスキーヤーが滑降してきたので情報交換する。彼らは赤

岩尾根からおりてきたようである。

 周りのブッシュの状況などを見た限り、例年よりも5mは雪が薄いの

ではないかと思われる。今年は頭上はるか上にブッシュがあるのだが、

昨年はブッシュなど全く見えなかったのだ。

 3時間ほど登って西俣奥壁の直下まできたのでそこから滑ろうかとい

う話になる。私は内心冷尾根の上からすべれないかと考えていた。冷尾

根側の側壁にかろうじて雪が着いていたので、久保田さんを誘うが、下

で待っているというので、1人で冷尾根の稜線上まで登る。

 スキーで登るには急斜面すぎたので、スキー靴にアイゼンを着けて、

手にはピッケルを持つ。慎重に急斜面を30分程登ると、冷尾根の上に

でた。すぐ上部に爺ケ岳の北峰、北稜が手に取るように見える。爺ケ岳

の懐深く入り込んだ感じで何ともいえない。冷尾根そのものはこの時期

はただのヤブ尾根である。

 スキーを付け、滑降の準備をする。かなり急だったので滑り出しは慎

重になるが、雪が安定していたのでさほどびびらずに久保田さんの待っ

ているところまで降りた。むしろ登る時の方が怖かった。そこで小休止

し、あとは広い西沢の谷を思い思いに滑降する、と書きたいところだが、

かなり石やブッシュが出ていて、下部はあまり快適ではなかった。

 登りで怖かった雪渓のスノーブリッジは、滑落すると流れにはまりそ

うなので、わずか50mくらいの間であったがアイゼンを着けて行くこ

とにした。こわごわと雪渓の上をゆく人間を1匹のカモシカがじっと観

察していた。

スキーを再び背負い、林道をぽこぽこ歩いてくだる。下っていくあた

りの山は山菜とりや渓流つりで賑わい、初夏の装いであった。いつまで

もスキーを担いであるいている私たちがバカのようであった。

 今年は少雪ということもあってパッとしなかったが、例年だと西沢は

すばらしいスキールートになります。針ノ木雪渓の上部くらいの傾斜で

ぐんぐんと1000m程せり上がって行きます。広大な西俣奥壁下の大

斜面をぐるりと囲むように赤岩尾根、冷尾根側の急斜面が展開していま

す。是非一度お勧めしたいところです。

【コースタイム】

 大谷原−−−西俣出合 −−−西俣奥壁下(標高1980m)−−−

 7:40 8:00  9:05 9:25      11:40

−−冷尾根稜線上(標高2100m) −−西俣出合 −− 大谷原 

   12:35 12:50             14:10       15:15

とりあえず