代かき馬を見に行ってきました。


今年の大ヒット!すばらしい斜面が待ってました。以下山川さんのレポートです。


「代かき馬」を滑る 白馬沢右俣滑降       山川 徳明

【1997年5月11日(日)】

【天気  】 薄曇り

【メンバー】 横山 山川

 きょうは金山沢を滑る計画で横山氏とやってきた。白馬尻の少し下でス

キーを履き、シールで登り始める。しかし、沢が大きく左にカーブすると

ころを回り込んだところで2人とも唖然としてしまった。上部のゴルジュ

は完全に雪が割れ、ゴウゴウと水がながれているではないか。側壁もガラ

ガラしており、通過は危険そうであった。今年は少雪であったが予想以上

であったのだ。へつりで失敗すると流れに落ちてしまうおそれもあり、別

のルートを滑ろう、ということで2人の意見が一致する。

 せっかく登り始めたのに下降するのはくやしいがしかたがない。杓子沢

か白馬沢にでも行こう、と大雪渓を登り始める。横山氏の話では、杓子沢

は落石でかなり汚れており、快適ではないだろうという。白馬沢は以前か

ら興味があった場所であるが、記録を見る限り、かなり上級者向けであろ

うという気がした。まあ稜線から滑れなくてもいいだろうと、偵察にでも

いくようなつもりで白馬沢に踏み込む。

 白馬沢はいざ入ってみると予想に反して広く、明るい沢がひろがってい

た。が、大雪渓のにぎやかさとは対照的に、我々しかいなく、静まりかえ

っていた。正面に白馬岳の命名の基になった代かき馬が迫っている。横山

さんは以前から代かき馬の右側の真っ白な大斜面が気になっていたという。

「滑ってみたいよなー」と私も言うが内心、あそこまでは登れないだろう

と思っていた。二俣まで登ってみると、谷は狭くなり傾斜が強くなるもの

の、雪はきれいにつながっており、問題ないように思われた。このような

あまり人のこない領域にふみこむときは、ワクワクする反面、何か無謀な

企てをしているのではないかと不安に思うことがよくある。

 何か上部に人のような点がみえて動いている。雪渓上にはよく見ると兼

用靴の足あとがあり、先行者がいるようである。このことは我々を勇気づ

け、もしかすると馬の横までいけるかもしれないと思う。登るにしたがっ

て急峻になって、代かき馬も頭上に迫ってくる。もっと恐ろしい谷かと思

っていたのだが、周囲の雰囲気は明るかった。しばらくすると先行してい

たスキーヤーが滑ってきた。稜線から滑ってきたという彼の言葉に気をよ

くしてわれわれもがんばろうという気になった。

 代かき馬の下をやや右にトラバースして登っていたとき、上部で「ガパ

ッ」と音がしたかと思うと、代かき馬の尾付近の氷瀑から巨大なブロック

がはがれ落下してきた。「こっちにくるなよ」という念力が効いたのか、

幸い隣のルンゼに入ってくれた。ちょうど休憩したかったところであった

が、安全なところまでがんばって登ってしまうことにした。

 代かき馬を真横に見る高度(約2400m)まで上がり休憩する。上部

にはもう危険なものはなく、一安心である。下からいつも見上げる代かき

馬の真横にいると思うと、感慨深いものがある。次第に青空も広がってき

てすばらしいロケーションの中にいることに満足する。そこからひとがん

ばりで稜線であった。雪倉や朝日岳が目に飛び込む。もう午後3時であっ

た。

 少々休憩し、スキーにワックスをぬり、滑降を開始する。稜線からしば

らくは緩傾斜であるが、次第に落ち込むような感覚を覚える傾斜になって

くる。周囲のロケーションとも合わせ、しかも代かき馬の横を滑っている

ということで、感激する。雪質もよく締まったザラメであり、快適なこと

このうえない。

 一番急傾斜な部分もさほどストレスを感じずに通過。石ころの多い狭い

部分を通過すると、広大な白馬沢の二俣に降り立った。そこからは大きな

ターンで白馬尻まで滑降。滑降は白馬尻まで25分とあっと言う間であっ

た。どこかの本に「薄い感動の繰り返しよりも濃い一発」と書いてあった

が、まさにそんな感覚だった。恐ろしいところというイメージを持ってい

た白馬沢だったがずっと親しみやすい場所になった 。

【コースタイム】

 白馬村 7:00 == 7:30 猿倉 7:45 −− 白馬尻 8:30 −− 二俣 10:30

 −−15:00 稜線(2719m)15:35 −−白馬尻 16:00 −− 猿倉 16:50 

とりあえず