野沢菜
信州の冬といえば野沢菜漬けです。冬の食卓には欠かせない野沢菜漬けですが、野沢菜作りはまだまだ暑い季節に始まり、手塩にかけて育てられます。
このページでは移りゆく白馬の季節とともに成長していく野沢菜の様子をご覧いただけます。文章は当館の切久保史子が書きました。
さあ、野沢菜の種まきです(といっても、それまでに土作りをします。何度も畑を耕して有機肥料をたっぷり入れ、土をやわらかくしておきます)。毎年9月3日を目安に種をまきます。もちろん雨がつづいたり逆に日照りがつづくときには2、3日ずれますが。今年は日照りがつづいていたので、畑に水をまいてから種をまきました。「きれいにそろって芽が出て、やわらかいお菜ができますように」と願って。
種をまいて5日め、畑にぞろぞろと芽が出てきました。うす緑色の小さい葉です。もう2日もすれば、二葉の間から新芽が顔を出します。このとき厚そうなところを間引いて、根を取り、おひたしにして食べる菜は、何ともいえない美味しさです。つるんと口の中ですべって、やわらかくて甘くて、いくらでも食べられます。葉っぱものの味が口の中に広がります。もちろん野沢菜は漬物にするために作るのですが、わたしはこの「つまみ菜」が一番好きです。間引くのに手間がかかり、半日つんでも、食べるときはあっという間です。一歳半の孫がこの菜を食べてから野菜が好きになり、食卓に上がったほうれん草とか春菊とかの緑色の野菜を見ると、手を出してほおばるようになりました。この菜もつみ頃があって、1日遅れると芯がかたくなり、食したとき口の中でごりごりします。
野沢菜の芽は15cmほどに伸びました。このころの菜は、おひたしにはかたく、漬物にしても歯ごたえがなく、食にも美味しくありません。ただ「虫にくわれないよう」、「風が吹いて倒れないよう」願いながら、ながめています。 わずか2週間ほどで、菜は30cm近く育ちました。大風も吹かず、まっすぐにのびています。これ位になると早く食べたくて、2,3日食べる分を畑からつんで、「切り着け」にします。2、3cmに切ってにんじんやきゅうりなどを入れた一夜漬けです。歯ごたえがあって美味しいです。毎食食べるので、ほかの漬物はいらなくなります。 そろそろ漬けてもいい大きさに育っています。今年はあまり虫に食われることもなく、大風に吹き倒されることもなく、ちょうどいい太さ、長さに育ちました。でもまだまだ気温は高く、菜漬けには早すぎます。切り漬けで我慢しながら、本漬けはもう少し先です。 「早く漬けてください、やわらかく美味しいですよ」と野沢菜がいっているようです。でもまだまだ気温が高く、漬けても美味しくなりません。もう少し気温が下がるまで待ちましょう。 気温は高いのですが、もう待ちきれません。いつ霜がおりてくるか分かりません。お菜をつみ始めました。あまり太くなく、丈も長すぎず、いいお菜で作業もしやすいです。つんだ菜をきれいに洗って漬け込みです。塩と唐辛子、ザラメでシンプルに漬けるのが我が家の漬け方です。以前はお酒、煮干、酢、こんぶなどを入れたりもしましたが、最近はシンプルに漬けています。その家その家によって漬け方は違い、味も違います。誰もが「自分の家のお菜が一番おいしい」と思って漬けて食べています。大きい桶にいっぱい漬けて、お客様を待っています。桶の表面にうす氷がはって、それを割って出すお菜は格別で、お客様が「美味しい」といって食べてくださると、この寒空で何日もかかって漬けた苦労が報われます。ひと並べひと並べ漬けては、「美味しく漬かってね」と願いをこめて漬けています。 お菜が漬かりました。まだまだ味はしみていませんが、この青くさい色のお菜はこの時期にしか食べられません。「いよいよ冬のシーズンだなぁ」とか「野沢菜はやっぱり美味しい」と思いながら、毎食食べています。お客様にも、この浅漬けの青い野沢菜が好きといわれる方や、12月の半ばすぎからしっかり漬かり、べっ甲色になったお菜が好きといわれるもいらっしゃいます。「野沢菜さん、今年も美味しい漬物をありがとう」と感謝しながら雪国の冬を迎えます。